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アジア経済の羅針盤と国際通貨としての日本円
私たちにとって、日本円を使って買い物をするのは当然のことです。
そこに日本円の凄さ、信頼性があるのかどうか感じることができる人など極めて少ないと思います。
外国人が感じる日本円の凄さ、信頼性が一体どれだけなのでしょう。
私は旅行がとても好きで世界中様々な所に行ったことがあるのですが、インドネシアに行ったときのエピソードがあります。
道端で南国の果物を買った際、店主の主人は私に「日本のお金でもいいよ」と言いました。
異国の田舎でも日本円で買い物ができたことを覚えています。
実際、日本円はハードカレンシー(国際決済通貨)としての機能も果たしています。
日本円はアジア経済の景気動向を表す指標として見られています。
今は中国経済なのではという見方もあるでしょうが、経済の安定性を見れば日本円のアジア経済にもたらしている影響の大きさはかなりのものです。
リスクオフ通貨としての日本円
よく耳にする「有事の円買い」とはどうして起こるのでしょう。
理由は簡単で、日本円を普段多く取引しているのが外国人だからです。
有事というと昨年6月の「英国、ユーロ離脱の是非を問う国民投票」がいい例です。
国民投票当日に、ドル/円、ポンド/円、ユーロ/円、クロス円のどれもが円高に振れていました。
では、どうしてリスクオフ時に日本円が買われるのか。
主に、理由は4つあります。
1.金融市場の大きさ
2.金利が主要国の中でも最低水準であること、
3.日本が世界最大の純債権国であること
4.経常収支(輸出入の合計、サービス収支、所得収支、経常移転収支)が黒字であること
金利が低いということはそれだけお金を簡単に借りることができることになります。
金利が低い円を借りる→外貨に交換する→現地事業に投資する、この流れがリスクオフの反対を意味するリスクオンです。
市場にリスクが浮き上がってくると、この逆の流れが発生します。投資という不透明な予測の領域から現実的な物に戻すということです。
日本が世界最大の純債権国であるということは、世界で一番海外にお金を貸し出している量が多いということです。
2位と3位はそれぞれドイツ、中国です。
日本の対外純資産額は約300兆円で、そのうち8割は民間が保有しています。
簡単な例で考えてみましょう。
ここに2人(T君G君)がいるとします。
T君はG君にお金を500万円貸しています。
この2人のうち、あなたならどちらのほうが信頼できますか?
ほとんどの場合、T君と判断するのではないでしょうか。
そしてT君が突然、物入りになりお金が必要になったらG君からお金を返してもらうとするなら、2人の間の上下関係がはっきりするのは明白なことです。
これを、市場に置き換えると、マーケットにリスクが浮き上がってくると、世界最大の債権国である日本の強さがはっきりするのです。
債務国から債権国へお金が流れます。
これは、日本円が大量に買い戻されることを意味します。
だからリスクオフ時に円高になるのです。
経常収支が黒字であることは、なぜ円高の要因になるのか。
これは「国際収支説」で説明されています。
「国際収支説」とは2国間のお金の流れを見てみる(実需)という理論です。
貿易収支はそのままの輸出が輸入より多ければ貿易黒字になります。
サービス収支は海外旅行に行く日本人と日本に旅行しにくる外国人どちらが多いかということを表すものです。
日本の場合、貿易収支は黒字でサービス収支は赤字です、しかし二つ合わせると圧倒的な黒字なのです。
経常移転収支は、海外への資金援助(ODAなど)、国際機関への拠出金などで、日本は積極的に行っているので赤字です。
これを合わせても日本の経常収支は黒字なのです。
日本の製品はすごいですね。つくったら海外の人がどんどん買ってくれるのです。
これがなぜ円高の要因なのか、それは日本がお金を使うのではなく稼いでばかりいるからです。
これは日本が貯金ばかり増えて、全然お金を使っていないということを意味します。
「生産→輸出→外貨獲得→円に交換→従業員の給料」
このような実需の動きが必ず働いています。
この4つの面と投機筋がかみ合うことでリスクオフ時の円高が発生するのです。
特に投機筋は、成績が求められる環境にあるので明らかなリスクが浮き上がった市場では一斉に円買いを仕掛けてくるでしょう。
日本銀行(BOJ)の役割とその歴史
日本銀行の主な役割は、「物価の安定」です。
投資家で目につくところだと、為替介入やマイナス金利導入などが、黒田日銀総裁の下で行われたのが印象的ではないでしょうか。
通称「黒田バズーカ」なんて呼ばれたりします。
日銀は、外貨準備金で円を売ってドル買いを行います。
円を売ってドルを買うので、ドル/円のチャートが陽線ばかりになります。
巨大な資金が突然マーケットに出現し突然のドル買いを行うので、ドルストレートにおいてもその痕跡が残っています。
中央銀行は、短期金利をコントロールすることは可能だが長期金利をコントロールすることは不可能であるというのが通説でした。
中央銀行は短期金利をコントロールすることで、それが長期金利にも影響を及ぼし、実態経済を支えるというのが当たり前でした。
各国の中央銀行は無理だといわれているにもかかわらず、巨大な資金によって長期金利をコントロールすることにつとめました。
日本銀行の政策の根本は市場にお金を流すことです。そのために金利の引き下げを行いました。
金利が下がればお金も借りやすくなり、お金がたくさんあれば大きい買い物もしやすくなります。
消費が伸びれば生産も活発化し、経済全体の周りが良くなるからです。
金利を下げるために日本銀行は日本国債を買います。これが通称「買いオペ」と呼ばれるものです。
民間銀行が過去に買った日本国債を日銀が買い取るのです。
日本銀行に買ってくれたことで民間銀行にお金が入り、そのお金は企業に融資します。
日本銀行の金融政策は、通常の金融緩和とは異なります。
日本銀行は買いオペをし続けることにしたのです。これが量的緩和と呼ばれます。
日本銀行の当座預金残高が無くなるまでやり続けるということです。
民間銀行からすれば、量的金融緩和は行われ続けるので、リスクがほとんどない日本国債を買って日本銀行に持っていき売りつける、ほんと素晴らしい金融政策だと思います。
日本銀行が国の財政を直接支え続けるというのはどのようなものなのかと考えてしまいませんか?
質的金融緩和というのは、日本銀行は金融機関から国債だけでなく買い取る資産の枠を広げていくというものです。
日本銀行がETFを買います。日本銀行が買うことで市場にお金を流すことを目的としています。
2016年1月、日本銀行は金融政策に「マイナス金利」の導入を決定します。
普通、銀行にお金を預ければ、利子がついて増えていきます。しかし「マイナス金利」は、お金を預けるとお金が減っていきます。
「マイナス金利」が適用されるのは日銀当座預金のある民間銀行だけで、一般人の私たちは、お金を預けたら減っていくなんてことはないです。
これは、日本銀行の意思表示みたいなものです。
民間銀行には、もっとお金を貸し出ししましょうと言っているだけです。
私たちの生活へのメリットは、住宅ローンの金利が下がるので、ローンが組みやすくなります。
この「マイナス金利」導入が発表されたとき、不動産株が上がっていたのはこれが原因です。
逆に、銀行株は下がりました。
民間銀行の収入源となっていた、日本国債を日本銀行に売りにいく作業に無駄ができてしまいます。
民間銀行の日本銀行当座預金の金利はマイナスになるのでお金は減っていき、日本国債もマイナス金利にシフトするので値段が目減りしていくのでまさに踏んだり蹴ったりというわけです。
日本銀行は、インフレ率2%を目標に金融政策を随時アップデートしてきます。
2016年9月、日本銀行は「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」導入を決定します。
ETFの買い入れに変更はなく、これからも買い続けます。
ETFの買い入れは、日経平均採用銘柄に偏っていたものが、TOPIXベースの銘柄の割合を高めることになりました。
日本銀行は全銘柄なんでも買入れします、買入れし続けますということです。
国債とETFには、致命的な違いがあります。
国債は償還期限があるのでいずれか消えます。しかしETFにはありません。
ETFを日本銀行が買い続けると、日本のすべての企業は日本銀行のものになってしまいます。
この時に、売りオペを行うのでしょうか?現実的に、売りオペなど行われたこともありませんし、日本銀行の巨額の売り注文をマーケットが見逃すことなどありえないはずです。
HFT、アルゴリズムが技術革新によって日々進化しています。
人間が追い付けないレベルの速さで売りオペに反応したら日経平均、いや世界経済にブラックマンデーが再び訪れます。
現状の日本銀行の金融政策は今の経済を支えるだけであって、将来のことを見たものだとは考えにくいですね。