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田畑昇人のFXブログ

【書評】図解でわかるランダムウォーク&行動ファイナンス理論のすべて

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図解でわかるランダムウォーク&行動ファイナンス理論のすべて

図解でわかる ランダムウォーク&行動ファイナンス理論のすべて
田渕 直也
日本実業出版社
売り上げランキング: 33,145

 

・はじめに
投資に対するアプローチの仕方としては、大雑把に分けると、経験論的なものと、アカデミックで理論的なものがある。
例えば、チャート分析は前者に属するものと言える。

しかし、経験論的なアプローチは環境が変わると機能しなくなることがよくある。
しかも、投資はきわめて精神的な行動であり、同じ手法を用いても、実行する人によって結果が大きく異なる。

一方のアカデミックな投資理論は、昔から「実践には役に立たない」と言われている。
もちろん、経験論的アプローチや理論的アプローチが全く無意味だというつもりはない。
ただ、理論的アプローチの土台のない経験論は独りよがりになりやすく、逆に理論的過ぎるアプローチは現実的ではなくなってしまう恐れがある。
つまり、両者はうまく融合されなくては、それぞれが活きてこない。

ウォール街の超一流トレーダー出身で、歴史に名を残す財務長官といわれたロバート・ルービン氏の思考や行動には、「確かなものなどなにもない、全ては確率論として捉えるべきである」という信念が貫かれている。
それが彼のトレーダーとしての成功を支え、財務長官としての素晴らしい業績を生み出したといえる。

マーケットの本質は「不確実性」である。
「こうすれば必ず儲かる」という方程式は残念ながら存在しない。
したがって、優れた投資理論とは、「マーケットの本質である不確実性にどう対処するか」ということを解き明かすものに他ならない。

本書は、経済学と心理学を融合した「行動ファイナンス」の世界を垣間みることができます。

マーケットで生き残っていくために、投資家心理を学ぶためには、必読の書です。

 

印象に残ったこと

・プロスペクト理論

行動ファイナンス理論の中心的な概念に、カーネマンの損失回避理論、すなわちプロスペクト理論と呼ばれるものがある。
カーネマン教授がこの理論でノーベル経済学賞を受賞したからというわけではないが、この理論は投資を考える際に避けて通ることのできない概念をいくつも提供してくれる。

図にすると、以下のイメージである。
プロスペクト理論

この図から、以下のことが説明できる。

 

・経済学は宝くじさえ説明できない

経済学では、市場の参加者が「合理的に行動する」という前提のもとに成り立っている。
つまり、人間は「金銭的な期待利益を最大化するように行動する」という意味になる。

さらに言えば、これは暗黙の了解のうちに、「貨幣の限界効用が常に一定である」ことが前提とされていることになる。
簡単に言えば、1円の価値、すなわち1円のお金から得られる満足(=効用)は、いつでもどこでも同じであるということである。



この仮定が妥当なものか、分かりやすい例を挙げてみる。

人は何故宝くじを買うのだろうか。
宝くじの期待配当率は約50%くらいにしかならない。

つまり、期待リターンは約−50%なのである。
宝くじを買うことは「金銭的な期待リターンを最大化する」こととは程遠い行動といえる。

 

それでも多くの宝くじファンがいるという事実は、「合理的行動」の前提になっている「貨幣限界効用一定」の仮説が現実的ではないことを意味している。
つまり、1円の価値は、時と場合により異なる。

サラリーマンが一生働いて稼ぐ所得は2億〜3億円程度といわれている。
一方の宝くじ(ジャンボ)も、1等が2億円、前後賞と合わせて3億円となる。
前者のサラリーマンの所得は何十年と働いて徐々に手にできるものであり、途中で生活費や子供の養育費、住宅や自動車の購入などで費やされるため、まとまって自由に使えるお金はほんの一部である。
一方、宝くじが当たれば、2億〜3億円のお金が一度に入ってきて、まさに自由に使うことができる。

「宝くじは夢を買うものである」という人もいるが、まさにこの「夢」こそが、宝くじにおける1円の価値(満足度)が、通常の生活における1円とは違う意味をもっていることを示している。

 

・損失回避人間の登場

経済学で仮定される合理的人間という考え方が現実の人間の行動を説明できないことを踏まえ、様々な実証活動を経て、ダニエル・カーネマン教授は、「人間は同額の利益から得る満足よりも、損失から受ける苦痛の方が大きい」という原則を発見した。
そして、その結果「人間は損失を回避することを優先する」という「損失回避理論」を打ち立てたのである。

この理論によれば、一旦利益が発生すれば人は小心になってすぐに利益を確定しようとし、損失が発生すれば大胆になってリスクをとろうとするということが導かれる。

 

・損失回避人間の行動パターン

効用曲線のグラフを見ると、まず損益ゼロのところから出発し、利益の方に向かう線の傾きよりも損失に向かう線の傾きが大きくなっている。
これは、同額の利益から得られる満足よりも損失から受ける苦痛の方が大きいことを示している。

そして、利益の額が大きくなっていくにつれて、満足度を表す線の角度が緩やかになっていく。
これは、追加的な利益から得られる満足(=限界効用)が低減していることを示している。

 

このように、満足度を表す線が上に膨らんだ曲線になっていると、追加で利益を得た時の満足度の増加よりも、利益を失うことによる満足度の損失の方が大きくなるため、できるだけ早く利益確定しようとする。
これが「人間は利益がでると小心になってすぐに利益を確保しようとする」ということの裏付けである。

一方、損失が出た場合どうだろうか。損失が発生すると、そこから大きな苦痛を受けるわけだが、いったん損失が発生すると、それ以上の損失から受ける追加的な苦痛の度合いが次第に緩やかになっていく。
これが下に膨らんだ線で表されている。

 

この場合、追加で損失が発生したときの苦痛の増加よりも、損失が減ることによる苦痛の解消のほうが効果は大きくなる。
つまり、損失が出た場合は、損失を確定させるよりも、そのままポジションを保有し続けようとする。
さらには、早く損失を解消するためにポジションを追加するナンピン買いなどを行うと考えられる。
こうして「損失が発生したときは、大胆になってリスクをとるようになる」わけである。

したがって投資家は、利益が出ればすぐに利食いしたがり、損失がでれば塩漬けにするかナンピン買いをしたがるということが分かる。
このようなトレードを繰り返せば、投資家は少しづつしか勝つことができず、負ける時は大負けする可能性がある。

 

・勝った気になってしまうメカニズム

投資家の心理的傾向は、投資判断を歪めてしまうだけではない。
投資した結果についての評価も歪めてしまう。

多くの投資家は、実際の投資実績よりもよい成績を残していると思いがちである。
個人投資家であれば、儲かった投資についてはいくら儲けたというようなことを鮮明に覚えているが、損した投資についてはきちんと損益を計算していなかったり、記憶が曖昧だったりする。

これは「自己責任バイアス」と呼ばれるものに起因している。

成功については、本当はそれがたまたまであっても、人間は自分の能力や努力によって実現したものだと思う傾向がある。
自己責任バイアスの中の「自己高揚バイアス」といわれるものである。
このバイアスのために、成功は記憶に鮮明に残る。

 

しかし失敗については、そこに自分の重大なミスがあったとしても、「たまたま運が悪かっただけだ」とか、「著名投資家も負けたらしい。自分だけじゃない」というように偶然のせいにしたり慰めを求めたりしがちである。
これが「自己防衛バイアス」で、やはり自己責任バイアスの一種である。

このバイアスのために、時には「自分の見込みは悪くなかった。だがマーケットがおかしな動きをした」とマーケットのせいにしたりすることがある。
責任を感じていないので、当然その記憶は薄れていく。
その結果、本当の成績は悪くても、自分ではなんとなくうまくやっているように感じてしまう。

 

負けていても勝っていると思ってしまうこの心理的傾向は、実はかなり厄介なものである。
自分が負け組投資家であることに気づかないまま、分の悪い投資を続けることになりかねないからだ。

不確実性に支配されるマーケットでは、負けること自体が悪なのではない。
むしろ、負けた投資を冷静に振り返ることで貴重な経験を得ることも多い。
本当に避けなければならないのは、それとは知らずに負け続けることである。

 

・損切りができない〜最も危険で最も陥りやすい罠〜

投資家が陥りやすい罠の中でも最大のものは、損切りできずにずるずると損失を拡大し、ついには決定的なダメージを受けてしまうという現象であろう。
この罠はすべての投資家を待ち受けており、この罠と無縁の投資家は存在しない。
この罠の背景にある投資家の心理過程は、認知的不協和という概念で説明できる。

これは心理学者のレオン・フェスティンガーが提唱した概念で、人間の心の中に矛盾した認識が存在する状態を指す。
そして、こうした矛盾した認識の存在は人間に心理的苦痛を与えるので、人間はそこから逃れるために無意識のうちに矛盾を解消しようとする、というのがこの理論の骨子である。

 

例えば、相場が上がると思って株を買ったとする。
そしてその後で相場が下がり始めたとする。
この場合は、「相場が上がると思う」という認識と「現実の相場は下がっている」という認識が矛盾を起こしていることになる。

そこでこの投資家は矛盾を解消しようとするわけだが、解消する一番目の方法は、「現実の相場は下がっている」という認識に統一するために、「相場は上がると思う」という認識を捨てることである。
ところが、この認識統一方法のためには、すでに買ってしまった株を売らなくてはならない。
「相場が上がると思う」という認識を捨てた以上、それでも「株を保有している」ことは、新たな矛盾を生んでしまうからである。

 

しかし、一般的には「株を買った」という現実の行動を伴った認識の方を変更する形で、矛盾が解消されるのには大変な困難が伴う。
人間は自分の行動を否定されることを嫌がるからである。
プロスペクト理論から、損失領域においては人間は損失を確定するよりもリスクをとり続けることを選びがちであると考えても構わない。

そこで、矛盾の解消手段として、第二の方法が選択されることになる。
それは、「現実の相場が下がっている」という認識を捨てることである。

 

とはいっても、現実に相場が下がっている事実自体を消すことはできない。
そこで、例えば相場が下がり始めると相場そのものを見なくなってしまうという形で矛盾解消を図るケースがある。

より一般的には、「現実の相場は下がっているかもしれないが、これは一時的な現象であり、すぐに上がり始めるだろう」という新たな解釈をつけて矛盾の解消を図ろうとするのである。
その他、もともと短期的な売買で利益を狙おうと始めた取引なのに、損がでた途端に「長期的に見ればいつか上がるだろう」というように投資目的や投資期間を事後的に修正してしまうケースもよく見られる。

 

注目すべきなのは、こうした新しい解釈や目的の修正は、株を保有しているという現実を正当化するために生まれたもので、もし株を保有していなければもたなかったはずの認識だということである。
投資が見るとやるのとでは大違いなのは、投資をすることによって心理構造や思考回路が変わってしまうということからきている。

通常、マーケットでは相反する様々な情報が飛び交っている。認知的不協和の解消過程にいる投資家は、そうした情報の中で、統一しようとしている認識を否定するような情報を無視しがちになる。

 

この場合でいうと、どうやら景気は後退に向かっているらしいとか、この企業の業績は悪化しそうだとか、相場はますます下がりそうだとかいう情報に接すると、「マーケットにはいろいろなことをいうヤツがいる」「こうしたコメントは悲観的になりすぎている」あるいは、「次の経済指標や決算を見るまではこうした見方に与する必要はない」というように、その情報の価値を過小評価する。

一方、自分に有利な情報には飛びつく。
その情報が不正確であてにならないものであっても、妙に納得してしまう。

 

投資においては、見込みが外れて自分が思っていたのとは逆にマーケットが動き出すこと自体は普通に起こりうることがある。
見込みが外れた場合は、その投資については諦め、次の機会を待つというようにすれば傷がどんどん大きくなることはない。

しかし、こうした認知的不協和における自己正当化現象が起こるため、傍から見れば明らかに逆向きのトレンドが発生していても、当の本人はそれを認めることができない。
確かにマーケットには、下落トレンドになったかと思ったら突然反転して上がり始めるということもある。
それが現実にはそれほど高い確率で起こるわけではないとしても、認知的不協和を解消しようとしている投資家にとっては、それが大きな心の拠り所となっていくのである。

図解でわかる ランダムウォーク&行動ファイナンス理論のすべて
田渕 直也
日本実業出版社
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