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田畑昇人のFXブログ

【書評】円高の正体 (光文社新書)

書評   

円高の正体 (光文社新書)

円高の正体 (光文社新書)

円高の正体 (光文社新書)

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安達誠司
光文社 (2012-01-17)
売り上げランキング: 14,100

現在、日本は深刻な円高状態が続いています。
長引く不況、逼迫する財政状況に加えて東日本大震災の影響—-。今の日本にはあまり好材料が見当たらないというのに、ドルが売られ、円が買われる、という状況が続いているのです。
なぜ、このようなことが起きるのでしょうか。
これまでいろいろなことが言われてきましたが、私は円高基調が続く原因は実にシンプルなことだと考えています。本書では、その「シンプルな原因」を明らかにするとともに、私がなぜその結論にたどり着いたかについて、くわしくお話ししていきます。

FX取引を行う上で、欠かせないのが「円高」と「円安」の理解。

僕がFXを始めた頃は、歴史的な円高でした。

円高について、シンプルに本質的なことを学ぶことができる本です。

 

印象に残ったこと

・投機と実需

為替市場に参加するプレイヤーは、銀行や生保・損保、年金基金、投資信託会社、個人投資家などでした。
そのほとんどが、キャピタルゲイン(為替差益)を狙った運用目的で為替取引をしています。

この為替差益を狙った為替取引は「投機」と呼ばれ、それ以外の経済取引の裏付けがある為替取引は「実需」と呼ばれています。
そして実際の外為市場では、前者の取引の方が圧倒的に多いのです。
実需の取引量は1〜2割とされていて、残りの8〜9割が投機とされています。

 

・日本全体にとって「円高」はどうか?

現在の日本にとって、円高は明確に「悪」です。
それは円高の進展と連動して、名目GDPが明確に減少しているからです。

GDPとは国内総生産のことで、「1年間に生み出された日本全体の利益の合計」です。

GDPが日本全体の利益の合計額だとしたら、その利益は必ず誰かの収入として分配されているはずです。
そう考えると、GDPとは「国民全体の収入の合計額」と捉えられます。
つまり、名目GDPの増減は「景気の上げ下げ」を示していることになります。

何故円高が進むと、名目GDPは減少していくのでしょうか?
それは円高によって、「輸出産業の利益が減っていく負の効果」の方が、「輸入産業の利益が増える正の効果」よりも大きいためです。
つまり日本では、円高が進展すればするほど、産業全体の円高の負の影響が浸透して利益が減少するため、産業全体の利益の合計額である名目GDPは減少し、景気が悪化するのです。

日本にとって、輸出産業は国の基幹産業です。
輸出産業の規模は、輸入産業の規模より大きく、「日本は海外に製品を輸出することによって利益を生み出している」ことが分かります。

また、円高は輸入品の価格を下げます。
そして、そのことによって、日本の国内製品が輸入品との競争に負けてしまうのです。
これは、円高が地方産業の衰退にも一役買っている可能性があるということです。

 

・円高で雇用が減る

しかも円高は、日本の産業を浸食していくとともに、日本の雇用も浸食しています。
企業は長引く不況の中で、常にコスト削減をしなければいけない状況に立たされています。

円高になると、海外の労働力が相対的に安価になります。
その結果、日本の労働者は海外の安価な労働力との競争にますますさらされることとなるでしょう。

もし円高がさらに進展し、それが長期に渡って続くということになれば、企業の経営者は、生産拠点を海外に移し、そこから製品を日本に逆輸入した方がいいと考える可能性は大いにあります。
これが今日本で問題になっている、企業の海外流出問題(産業の空洞化)です。

円高は日本の失業率を高める圧力すら持っているのです。

・物価上昇率と為替レートの関係

「物価が上がる」ということは、「お金の価値」に対して「モノの価値」が相対的に上がるということを意味していることになります。
逆に言えば、「モノの価値」に対して、「お金の価値」は相対的に下がるということになります。

為替レートは2国間の通貨価値の比率で決まります。
日本の物価がアメリカの物価に対して大きく上昇すると、「円の価値」は「ドルの価値」よりも、より大きく下落することになります。
つまり、円がドルに対して安くなるのです。そして同時にドルは円に対して高くなるのです。

まとめると、
1.物価上昇率が高い国の為替レートは安くなる(通貨安が起こる)
2.物価上昇率の低い国の為替レートは高くなる(通貨高が起こる)

・金融政策が決める予想インフレ率

各国の予想インフレ率は「各国中央銀行の金融政策」で決まります。
金融政策は、企業や消費者、投資家の意思決定に多大な影響を及ぼしており、その中には、将来のインフレに対する予想の変化も当然に含まれているからです。

・予想インフレ率と通貨安の関係

1.金融緩和によって中央銀行が、積極的に資金を供給する
2.このことで銀行は、中央銀行からの「世の中により多くのお金を流通させることで景気を刺激し、もっとインフレ率を上げたい」というメッセージを受け取る
3.銀行の予想インフレ率が上昇し、銀行はその予想に従う。その結果、国債を買ったり、株を買ったり、貸出を増やしたり、といった投資活動を活発化させる

この結果起こるのは、以下のようなことである。

A.普通国債の価格が下がる

この時、銀行の予想インフレ率の変化を反映して、最も早く売られ、価格が変化するのが国債などの債券です。
国債などの債券の多くは、あらかじめ満期日や金利が決められています。そのため他の金融商品の額(例えば株価)が下落していき、ならびにその国のモノやサービスの価格が総じて下落していくデフレの局面であれば、国債の額面上の価格は目減りしないので、国債を持とうとする人が増えます(相対的に株よりも国債の価値が上がる)。
しかし逆に、予想インフレ率が上昇し、その国のモノやサービスの価格が総じて上昇するインフレが起こる局面では、国債の価格は目減りしない代わりに増えもしないので、その後の上昇が見込まれる株などを買ったほうがいいと判断する人が増えます(相対的に国債よりも株の価値が上がる)。
また、一度発行された国債は、自由な市場での売買が可能なので、その時々によって取引価格と金利が変わります。そして銀行が手持ちの国債を売りに出すということは、国債の売り手が多くなり、買い手が逆に少なくなることを意味しますので、国債の価格は下がるのです。
国債の価格が下がるということは、同時にその国債の金利は上昇します。何故価格の下がった国債の金利が上がるかというと、人気の下がった国債を売ろうと思ったら、金利を上げない事には誰も買ってくれないからです。つまり、国債の価格が下がると、同時にその金利は上昇するのです。

B.為替レートが安くなる

予想インフレ率が上昇すると、次にその国の通貨安が起こります。これはモノの価値に対してお金の価値が下落するからです。

C.株価が上がる

予想インフレ率が上昇すると、株価も上がります。予想インフレ率が上昇することで実際にインフレが生じると、企業の額面上の売上が増えるので、企業の収益が改善するからです。この時、収益が改善する企業の株価は上がることが予想されるので、投資家は株式市場に活発に株への投資を行うようになります。それによって実際に株価が上がるのです。株価が上がり続ければ、企業にとって、株式を発行し資金調達することが容易になります。その結果、設備投資などの投資が増えるでしょう。

D.銀行貸出が増える

予想インフレ率が上昇し、銀行による企業への貸出が積極化すれば、貸出先の企業にとっても景気が良くなる兆候が見えるようになるので、企業は自社の製品やサービスの売値を引き上げることができるのではないかと考えます。

円高の正体 (光文社新書)

円高の正体 (光文社新書)

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安達誠司
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